『今昔物語集』から、源頼光四天王に関する少し間抜けな逸話を紹介します。
源頼光四天王は、胆力、力量、知恵全て抜群の勇士であり、世に名の知れた強者でした。このうち、坂田金時、平貞道、平季武の3人で、
「賀茂の祭りをどうしてもみたい」
という話になりました。
賀茂の祭りは当時の都人にとって何よりの見物であり、勅使の美しい行列を、沿道に桟敷まで設けて見物されていました。
3人は、
「馬に乗って見物に行くのもなあ。かといって顔を隠して徒歩で行くのも・・・何かよい方法はないものか」
と話していたのですが、
「牛車を借りて乗っていくのはどうだろう」
とのアイデアが出ました。ただ、途中で身分の高い貴人の行列にでも出くわして、無礼者として引きずり回されるのはかなわんと、下簾を付けて女車を装っていくことにしたのです。
当日は借りてきた牛車に身を隠して3人乗り、牛飼童に引かせて見物先へ都大路を走り出したのですが、当然初めて乗ったので勝手が分かりません。
座り方も分からず、道の凹凸で車が上下する度に3人は振り回され、壁に頭を打ち付け、あるいは互いの顔をぶつけたりと散々です。
しかし途中で降りるわけにもいかず、牛飼童に
「もう少しゆっくり進んでくれ」
と声をかけるも、その声を聞いた周囲の人から怪しまれる始末で・・・
ようやく見物場所へ着いたときは、まだ勅使行列が来るまでに時はあったものの、3人とも完全に車酔いし目を回してしまっている状態で、牛車の中で倒れてしまっていました。
3人が完全に倒れてしまっているうちに勅使の行列は過ぎ去ってしまいます。悔しがりますが、今度は帰りをどうするか悩みだします。
「帰りの車も飛ばされた日には我らは生きて帰れまい。千人の敵勢に向かって馬を駆けさせていくのは屁とも思わぬが、牛飼童1人にいいように振り回されるとは・・・」
そう言い合って、周りから人がいなくなるのを待ち、車を降りて先に帰らせ、3人はとぼとぼと歩いて帰ったといいます。
その後彼らは牛車には寄り付きもしなかったと(>_<)
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